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麻疹について

みなさんこんにちは。
岸和田市別所町のさかもと内科クリニックです。
当院ではお子様からご長寿まで幅広くプライマリケアを実践させて頂いておりますので、
内科・小児科、何れの方でも受診していただけます。

いつの間にか桜が散り、新緑が映える季節になってきました。

しかしながら、大阪の春は短いといつも感じます。

あっという間に夏の気温になってしまいますよね。

暑いのが得意ではない私は、そんな印象が年々強くなってきている気がします。

さて、今週末からGWですね。

5月1日、2日もお休みの方は、長期の休日となりますね。

当院はカレンダー通りに、診療致します。

 

連休中にお出かけを予定されている方も多いと思いますが、

沖縄のみならず、国内で感染者の報告が相次いでいる麻疹についてです。

きっかけは本年3月に海外からの渡航者が、沖縄を旅行中に麻疹と診断されたのでした。

沖縄県は麻疹対策で全国一、二を争うとされるほど熱心な県と言われていますから、感染拡大抑制のためにいち早く対策に奔走して下さっているのは間違いないところです。

それでも麻疹というのは、これだけの拡がりを見せるのですから、感染力が強力なのですね。

その感染力は実際のところ、インフルエンザの比ではないのです。

接触感染、飛沫感染のみならず、空気感染(飛沫核感染)も起こすので、教室やオフィス、体育館、講堂などの広い空間であったとしても、空調が共通している場合、周囲の人々への感染がおこりえる事態となります。

典型例はどのような臨床経過を辿るのでしょう。

やっかいなのは、初期の「カタル期」といわれる時期が、感冒様の症状と変わらず、かつ、その段階での感染力が最大である、とうことです。つまり、自身が麻疹にかかったという自覚を持ちえない時期に、周囲にそれを広げてしまうリスクが大きいということなのです…。

典型例においては、麻疹ウィルスに感染後、10日~12日程度の潜伏期間を経て、38℃前後の発熱、倦怠感、上気道症状(咳嗽、鼻汁、くしゃみ、咽頭痛)、それに結膜炎症状(結膜充血、眼脂、羞明)が出現し、2日~4日程度続きます。その時期の後半に口腔粘膜の奥歯の対面に白色のやや隆起した白色の小斑点が出現し、これをコプリック斑といいます。(これは発疹が出ると2日目くらいまでに消失してしまうとされています。)

カタル期の発熱が一度下がりかけて半日ほどすると、再び高熱となります(この時点では39℃以上になるケースが多いです〈二峰性発熱〉)。この時期から、発疹が生じてきます。頸部、前額部、耳の後部などから始まり、顔面、体幹部、上腕、四肢末端に拡大していくとされます。

発疹は扁平な局面から隆起し、癒合して不整形な斑状となり、押すと褪色します。

合併症(脳炎、肺炎)がなければ、発症から7日~10日後には回復してきますが、その後、数週間は、所謂免疫機能が低下した状態になり、種々の感染症への罹患のリスクに注意しなければならないとされています。

 

麻疹累積報告数の推移(2012年~2018年第1週~第15週)

グラフ化され、感染動向が分かります。

https://www.niid.go.jp/niid//images/idsc/disease/measles/2018pdf/meas18-15.pdf

 

<続報>沖縄県に関連する麻疹患者の発生状況について

(平成30419日現在)

国立感染症研究所 感染症疫学センター   (掲載日 2018年4月20日)

2018年3月23日、沖縄県内を旅行中の台湾からの旅行客が麻疹と診断されたと報告がありました。以降、この患者(初発例)と接触歴のあった二次感染例を中心に、沖縄県内では麻疹患者の発生が続いています。初発例は、感染性のある期間中に広く沖縄県内を移動していたこと、二次感染例が沖縄県内の広い地域から報告されていることから、引き続き、沖縄県内及び県外での感染拡大が懸念されます。4月12日愛知県から、3月28日から4月2日の期間に沖縄県に旅行歴のある10代男性患者の報告があったことが、報道発表されました。 (名古屋市報道資料より)。

沖縄県によると4月19日現在、65例の麻しん患者が発表されています。沖縄県における麻疹患者発生状況は随時沖縄県から更新されております。詳細は沖縄県ホームページをご参照ください。(http://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/eiken/kikaku/kansenjouhou/measles.html

続きは、以下のPDFファイルからご覧ください。

<続報>沖縄県における麻疹患者の発生状況について(平成30年4月19日現在)

 

国立感染症研究所は本年4月17日付けで以下のアナウンスを発表しています。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/id/655-disease-based/ma/measles/idsc/7982-mrvaccine2018.html

麻しん・風しん混合(MR)ワクチン接種の考え方

麻疹は発症すると特異的な治療法がない重篤なウイルス感染症で、感染力が極めて強い。しかし、予防接種で予防可能である。第1期、第2期の定期予防接種を徹底するとともに、小学生以上で、検査診断された麻疹の罹患歴がない場合は、必要回数である2回の予防接種の記録を持っていることが重要である。 2018年は海外からの輸入例を発端とした散発例、アウトブレイクが全国各地で相次いでおり、今後の感染拡大が懸念される。4月末~5月初めには大型連休があり、国内外への旅行者も増加することから、麻疹に対する免疫を持たないままで過ごすことは、極めてリスクが高い。 国民一人一人の麻疹に対する免疫を強化し、わが国の麻疹排除状態を維持するために、可能な限り早めのMRワクチン接種が推奨される者、接種における注意点などについては以下のPDFをご参照ください。
麻しん・風しん混合(MR)ワクチン接種の考え方[PDF 184 KB]

 

https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/measles/MRvaccine_20180417.pdf

 

表1 可能な限り早めのMRワクチン接種が推奨される者 (注意点[表2]は必ず先に確認する。国立感染症研究所感染症疫学センター4月17日発表から)

【定期接種対象者】 ・ 第1期定期接種対象者(1歳児) ・ 第2期定期接種対象者(小学校入学前1年間の幼児:今年度6歳になる者) 【定期接種対象者以外】1カ月以内に海外旅行・国内旅行を予定している者(可能な限り2週間以上前に接種を済ませる。旅行直前に接種する場合は、接種後5~14日の体調変化に注意が必要) ・ 医療関係者(救急隊員、事務職員などを含む) ・ 保育関係者 ・ 教育関係者 ・ 不特定多数の人と接触する職業に従事する人 ・ 近隣で麻疹患者の発生が認められる、生後6~11カ月児(緊急避難的な場合に限る) ・ 0歳児の家族 ・ 麻疹抗体価陰性あるいは低抗体価の妊婦の家族 ・ 麻疹抗体価陰性あるいは低抗体価の麻疹含有ワクチン接種不適当者の家族 ・ 2歳以上第2期定期接種対象期間に至る前の幼児で、麻疹含有ワクチン未接種あるいは接種歴不明者 ・ 小、中、高、大学、専門学校生などで、麻疹含有ワクチン未接種あるいは1回接種あるいは接種歴不明者

表2 麻しん風しん混合ワクチン(以下、MR ワクチン)の接種の注意点

接種不適当者*1に該当しないことを確認する。 ・ 麻疹含有ワクチンの接種歴は記録で確認する(記憶はあてにならない。接種の記録がなければ、受けていないと考える)。 ・ 妊娠出産年齢の女性は、接種前に妊娠していないことを確認し、ワクチン接種後約2カ月間は妊娠しないように注意する。 ・ 1歳以上で2回の麻疹含有ワクチンの接種記録がある者、検査診断された麻疹の罹患歴がある者、既に発症予防に十分な麻疹抗体価を保有していることが明らかな者は受ける必要はない。 ・ 初回接種の場合は、接種後5~14日を中心として、約20%に発熱、約10%に発疹が見られることがあることに注意する。2回目接種の場合は、これらの症状出現頻度は低い。 ・ 接種不適当者に該当する場合は、麻疹抗体価を確認し、免疫状態を把握しておく。その結果、麻疹抗体価が陰性あるいは低い抗体価であった場合は、人が多く集まるところや麻疹流行国に行くのを避け、家族や周りの者が必要回数である2回の予防接種を受けて、麻疹に対する免疫を獲得しておく。

*1:接種不適当者;

・ 明らかな発熱を呈している者 ・ 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者 ・ 本剤の成分によってアナフィラキシー*2を呈したことがあることが明らかな者 ・ 明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者 ・ 妊娠していることが明らかな者 ・ 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者 *2:アナフィラキシー;重症のアレルギー反応のことで、全身の発疹、かゆみまたは紅潮、口唇の腫れや浮腫、呼吸困難、喘鳴、血圧低下、意識障害、腹痛、嘔吐などを認める。

 

さて、

国内での感染を抑制するにはどのようにすればいいのでしょう。

国立感染症研究所は、

(1)麻疹風疹混合(MR)ワクチンの2回定期接種を確実に実施する

(2)患者の早期発見に努める

(3)麻疹ウイルスに感染するリスクの高い医療関係者、保育関係者、学校関係者あるいは空港など不特定多数と接する機会の多い職場で働く人、さらには接種を受けたくても受けられない人の家族には、必要に応じワクチン接種を奨励する

という3点を打ち出しています。

また医療者側は、2007年時点の流行を受けて、2008年1月1日から、麻疹は従来の定点サーベイランスの対象疾患から、全数把握疾患に変更されています。

それと同時に、すべての医師は、麻疹あるいは修飾麻疹と診断した場合、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ることが義務付けられたのです。

さらに、排除が認定された2015年以降は、臨床診断の時点で直ちに最寄りの保健所に氏名、住所などとともに届け出ることが義務付けられています。

皆さん、現状を把握され、必要な対策をされますよう。

参考にして頂けましたら幸いです。